2008年2月12日 – プラスチックス成形部品の特殊加工メーカーである佐藤ライト工業株式会社(代表取締役:佐藤伸夫、本社:三重県津市)は、同社でカスタマイズ・コンパウンド事業を手掛けるSPLAS(エスプラス)センターにおいて、淡色(淡いグレー)の帯電防止材料「SPLAS Silverシリーズ」を開発、商品化の第一弾として高機能樹脂・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)をベース材料に用いた切削加工用母材「SPLAS Silver PEEK」の販売を開始する。同社では、帯電防止特性および微細穴加工が要求される、ICテストソケットを主要ターゲットとして、需要開拓を進めていく方針である。
同社のSPLAS Silver PEEKは、特殊な超微細フィラーを添加したPEEKを圧縮成形したもので、ESD(静電気帯電防止)特性として表面抵抗率1011Ωの半導電性が付与されており、また、狭小間隔の穴加工を施してもリーク(通電)の危険性が無いという特徴を持つ。また、一般的にESD材料は炭素系添加材が配合されているため黒色の製品が多いが、母材色を淡いグレー色とした点も特徴の一つである。
近年、ICチップは高集積化の進展により、リード(端子)間隔が0.15mmと微細化している。このため、ICチップのテスト工程で用いられるICテストソケットにも同様の微細穴加工が必要となるが、長さ0.15mm以上のESD添加材が配合された材料をテストソケットに用いた場合、加工された穴と穴の間で添加材が橋渡しになり、添加材中を電気が流れるリーク現象が生じる危険性が指摘されていた。SPLAS Silver PEEKは、ESD添加材として長さ約0.002mmという特殊な超微細フィラーを用いているため、狭小間隔の穴加工を施しても、リークの危険性が無い。
また、東南アジア地域ではテスト工程を手作業で行うケースが多く、テスト対象であるICチップのほとんどが黒色であるため、黒いテストソケットの上に搭載された黒いICチップは見分け難く、テスト後にICチップの回収忘れの可能性が指摘されている。ICテストソケットに淡色のESD材料であるSPLAS Silver PEEKを用いることで、黒いICチップの判別が容易になるというメリットもある。
同社SPLASセンターの佐々木所長は「SPLAS Silver PEEKは、加工に圧縮成形法を用いているため、射出成形法や押出成形法を用いた成形品に見られる、微少な歪みや成形品全体にわたる特性のバラツキが抑えられる」としており、「今後は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などをベースにしたSilverシリーズの商品化を予定している」と話している。
同社SPLAS Silver PEEKは、縦横が200mm、厚みは10mm/20mm/30mmの平板3種類を標準品とし、最大600mm角のサイズまで対応が可能。価格は最小サイズである200mm x 200mm x 10mmの板材で75,000円程度を予定しており、その他のサイズについては個別に対応する。また、要望により丸棒形状にも対応が可能。発売初年度の売上目標は5000万円程度を見込んでいる。
SPLAS Silver PEEKの主な物性値
項目 | 単位 | 規格 | Silver PEEK | ナチュラルPEEK |
引張強度 | MPa | JIS K7133 | 106 | 97 |
引張伸び | % | JIS K7133 | 1.5 | 35 |
曲げ強度 | MPa | JIS K7203 | 148 | 170 |
曲げ弾性率 | GPa | JIS K7203 | 8.2 | 4.2 |
シャルピー衝撃値(Notch) | kJ/m2 | JIS K7110 | 1.9 | 8.2 |
吸水率(24hr @ 23℃) | % | JIS K7209 | 0.06 | 0.5 |
上記数値は代表値であり、保証値ではありません。